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キャッシュ・アウトの新制度の誕生

キャッシュ・アウトとは、現金を対価として少数株主を会社から退出させることを指します。一般的に扱う事例としては、持株割合が100%でない子会社を100%子会社化する場合、少数株主を退出させることなどが挙げられます。

なお、個々の少数株主から株式を買い取ることも考えられますが、少数株主が一定数の場合には手続が煩瑣ですし、そもそも売却に反対する株主が1人でもいたら、100%子会社化できないという問題も生じ得ます。

しかしながら、従来は全部取得条項付種類株式を用いる方法が利用されていました。

つまり、全部取得条項付種類株式に係る定款の定めを新設し、全部取得条項付種類株式を取得し、端数株式の売却代金を少数株主に交付する方法です。

メリットとしては完全子会社となる会社に対する時価評価課税の問題も回避という点がありますが、株主総会の特別決議が必要であるため、時間とコストがかかるという点がデメリットでありました。

改正会社法において、新しいキャッシュ・アウト方法として「90%以上の株式を有する株主は、他の株主全員に対し、その株式全部を、自己に直接売り渡すよう請求できる」というものが追加されました。これは新株予約権者がある場合は、その全員に対しても同様の請求することもできます。

<キャッシュ・アウト方法一覧表>
  特別支配株主による株式等売渡請求(創設) 全部取得条項付種類株式の取得 株式の併合 金銭交付型略式組織再編
株主総会の決議 不要 必要 必要 不要
税務上の取扱い ・売渡株主(=譲渡株主)の株式譲渡損益認識 ・譲渡株主の株式譲渡損益認識 ・端数株主の株式譲渡損益認識 ・譲渡株主の株式譲渡損益認識
・対象会社への時価評価課税なし ・対象会社への時価評価課税なし ・対象会社への時価評価課税なし ・対象会社への時価評価課税あり(非適格組織再編のため)

責任限定契約の変更に関して

皆様お世話になっております。
司法書士の古堅です。

今回は平成26年6月27日に「会社法の一部を改正する法律案」(法律第 90 号、以下「改正会社法」という。)が公布されましたが、その中の「責任限定契約と監査役の監査の範囲」に関してご説明いたします。

1.責任限定契約に関して
責任限定契約とは、株式会社の役員などが負う賠償責任額につき、 定款で定めた金額の範囲内で、あらかじめ株式会社が定めた金額と会社法425条1項に定める最低責任限度額のいずれか高い額を限度とする旨の契約をいいます。

今回の改正では、取締役のうち、社内取締役であっても業務執行を行わない取締役であれば責任限定契約を締結することができるようなりました。

また、監査役はもともと業務執行を行わないので、常勤監査役か社外監査役かどうかを問わず責任限定契約を締結することができるようになります。

改正会社法における責任限定契約導入の要件としては、
(1)定款の定め
責任限定契約を締結するためには、旧会社法と同様に、定款で責任限定契約を非業務執行取締役等と締結することができることを定めていること。

(2)定款を変更する場合の監査役の同意等
非業務執行取締役等との責任限定契約に係る定款規定を設ける場合は監査役の同意が必要。
なお監査等委員会設置会社の場合は、各監査等委員の同意が必要となります。

(3)最低責任限度額の改正
①代表取締役または代表執行役 6年
②代表取締役以外の取締役(業務執行取締役・執行役・支配人その他の使用人であるものに限る)または代表執行役以外の執行役 4年
③取締役(①または②に掲げるものを除く)、会計参与、監査役または会計監査人 2年

会社法改正に伴う社外役員の要件の変更

皆様お世話になっております。
司法書士の古堅です。

今回は平成26年6月27日に「会社法の一部を改正する法律案」(法律第 90 号、以下「改正会社法」という。)が公布されましたが、その中の「社外性の要件の変更」に関してご説明いたします。

社外役員(社外取締役、社外監査役)とは、社内の指揮命令関係の影響を受けない立場で発言する人を指します。彼らは経営を健全に維持する役割が期待されており、資格要件として会社関係者でないことが要求されています。

今回の改正では、社外役員になれない人的範囲が拡げられ、これまでより一層社外性が求められることになります。

具体的には以下のとおりです。

(1)社外取締役
①社外性の要件に以下の点が追加されます(要件の厳格化)。
・親会社の取締役・執行役・支配人・その他の使用人でないこと(改正会社法 2 条 15 号ハ)。
※親会社の (社外) 取締役による兼任ができなくなります。

・当該株式会社の経営支配者(自然人に限る)でないこと(同上)
*「経営支配者」の定義は省令(会社法施行規則)により定められます(50%を超え
る議決権を有する株主であること等が、改正案としてパブリックコメントに付されて
います)。

・兄弟会社の業務執行取締役等でないこと(同条同号ニ)
*「業務執行取締役等」の定義は以下のとおりです(同条同号イ)。
=「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役~若しくは執行役又は支配人
その他の使用人」

・経営支配者(自然人に限る)又は当該株式会社の取締役・執行役・支配人その他の重
要な使用人の配偶者又は二親等以内の親族でないこと(同条同号ホ)。

②社外性の要件について対象期間が導入されます(要件の緩和)。
・その就任前 10 年の間に、当該会社又は子会社の業務執行取締役等でなかったことに
限定されます。(同条同号イ)。

・ただし、その就任前 10 年内のいずれかの時において、当該株式会社又はその子会社
の取締役・会計参与・監査役であったことがある者(業務執行取締役等であった者を
除く)にあっては、それらへの就任の前 10 年間、当該会社又はその子会社の業務執
行取締役等であったことがないことが求められます(同条同号ロ)
*例えば、株式会社の業務執行取締役が、その退任から 10 年を経過しない間に監査
役に就任していた場合、仮に上記の要件(10 年)を満たしていた=業務執行取締役を
退任してから 10 年超経過していたとしても、社外取締役としての機能を十分に果た
しうるほど、業務執行者からの影響が希薄化したということはできないと考えられま
した。

(2)社外監査役
①社外性の要件に以下の点が追加されます(要件の厳格化)。
・親会社の取締役・監査役・執行役・支配人・その他の使用人でないこと(改正会社法 2 条 16 号ハ)。
※親会社の (社外) 監査役による兼任ができなくなります。

・当該株式会社の経営支配者(自然人に限る)でないこと(同上)
*社外取締役と同じ趣旨です。

・兄弟会社の業務執行取締役等でないこと(同条同号ニ)
*社外取締役と同じ趣旨です。

・経営支配者(自然人に限る)又は当該株式会社の取締役・支配人・その他の重要な使用人の配偶者又は二親等以内の親族でないこと(同条同号ホ)。
*社外取締役と同じ趣旨です。

②社外性の要件について対象期間が導入されます(要件の緩和)。その就任前 10 年の間に、当該会社又は子会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人でなかったこと限定されます(同条同号イ)。

・ただし、その就任前 10 年内のいずれかの時において、当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、その監査役への就任の前 10 年間、当該会社又はその子会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人であったことがないこと(同条同号ロ)